止まらぬ ワクチン 「信仰」2 病気を治すのではなく豚を治す

 

 かって、spf農場の運営に携わった時に、arのワクチンを打つべきかどうか非常に迷った時期があった。

出荷日令も問題なく、豚も健康であったが、なぜか血液の分析をして、抗体検査を行うと、明らかにarにひどく感染していることを示す抗体価が出てくるのである。

検査機関の報告書を読むとすぐにでもワクチンを打たないと、被害が出るような報告がなされていた。しかし、前述したように、出荷は170日令程度でできていて、また、鼻きり試験でも異常は見られていなかった。

結局 ワクチンは、接種しないことに決め 問題は、何もおこらなかった。

後で、いろいろ情報を集めると、衛生状態の良い農場の方が発症がみられないのに、arなどの、抗体価が高く出る傾向を持つという。

現在の医学は、検査万能である。検査にひっかかれば、即 アウトという理解が広く浸透してきている。一般に衛生関係者に検査結果の判断を仰ぐと、人間の場合と同様に「やらないよりは、したほうが安心」というのが最大公約数である。

しかし、この安心の為のワクチン接種をつづけると、無限に範囲が広がり歯止めが利かなくなる可能性が出てくる。まず、冷静に農場の衛生状態、成績等を分析して、費用対効果の検討の上で採用するかどうか、決定すべきであろう。

また、発育に関係するワクチンは、できれば、接種区と対象区を設け、明確な差が出るかどうか検討すべきである。