凍結精液 + 深部注入が現場を変える
 

 凍結精液という牛では、ほぼ100% ストローを使った、凍結精液による、人工授精が行われている。しかし、豚では、試験機関などで行う特殊な技術との認識で、人工授精では、現場ではほとんど、使われてこなかった。
この「埋もれた技術」が再び脚光を浴びようとしている。日本発のこの技術は、コストも現在の希釈精液製造と変わらず、解凍 調整作業も数分でおこなえるようになってきている。一時ほどのブームではないが、精液の有効活用の面でも深部注入にも関心が出てきた。

@大分県発の新技術
 凍結精液というと、取り扱いのめんどくささ、それに、反比例しての成績の低迷=低受胎率、産子数の減少という課題に直面してきた。
これらの問題に対し、ストローに封入する精子の事前の分離調整作業で、受胎率低下の原因となる要素の解明と除去 加工技術の工夫で受胎率 産子数の低下に歯止めをかけるとともに、現場で使いやすいように、希釈液、解凍の工夫も開発された。
これらに、真剣に取り組んだのは、大分県農林水産研究センター 畜産研究部 豚チームの岡崎 博士を中心とするグループである。
 博士らは、現場で使える技術でなければ、地域の為にならないという、強い使命感のもと数年前から、開発に着手、現在、大分県内の肉豚生産者に、試験場の種豚の凍結精液を供給するじぎょうからはじめた。
 さらに、生産者から送られた農場の精液を凍結加工しこれを凍結精液として生産者のもとに届けるサービスも開始している。
 (有)黒豚振興エージェンシー(千葉県香取市)では、鹿児島にあるAIセンターで採取した黒豚のAI精液を大分で凍結精液に加工、これを 千葉に移送し実際に現場で使用して、昨年より、現場で実際に使用している。成績は、希釈精液によるAI 本交と比べると、まだまだ見劣りはするが、その差は縮まってきている。

A凍結精液=いつでも、交配できるメリット 冬に採取した精液で夏に授精OK
 交配作業において、困るのは交配したいと思う時に交配用の雄が使えないことである。
また、AIをするにおいても、採取、調整、検査、パック ボトルづくりなど、結構時間がかかる。また希釈精液の場合、製造後3日以内に使いきることが、一般化している。特に、夏場など、雄の交尾慾の低下、精液性状の悪化など問題が出てくる。凍結精液の場合は、雄豚の調子のよい秋冬に採取した精液ならば、凍結後の活力は、何年たっても失われない。また、技術、希釈剤の進歩で、特別な道具もいらず解凍してから授精できるボトルの状態にするまで2〜3分で行うことが可能となってきている。凍結精液は、特定の雄の精液を年間を通じ安定して使え、業界に革命を与える技術である。