飛耳長目 〜 海外から見た東日本大震災


 飛耳長目とは、広辞苑にも載っている言葉ですが、「遠方のことをよく見聞する耳目。物事の観察に鋭敏なこと、転じて、書籍のこと」との解説が出ています。歴史的に観ると、日本を大きく、変えた明治維新の原動力となった指導者たちを輩出した、長州(山口)にあった「松下村塾」にそのルーツがあります。

 「松下村塾」には、各地からいろいろな人が来訪しました。その際に見聞きした、特に、海外の情報を「掲示板」のようなかたちでまとめ、一冊の情報誌の形にしたものを、「飛耳長目」というかたちで、塾におき公開したそうです。そこには、西欧列強のアジア侵攻、中国の体制の動揺など、最新の世界情報が網羅されてきたといわれています。

 また、それを読んだ人が自分の見聞を付け加える形で、「飛耳長目」を拡充させていったそうです。「飛耳長目」は、乏しい海外情報に飢えていた多くの人たちに、大いに支持され、多くの人が、「飛耳長目」を見るために松下村塾を訪れたそうです。

 現在、海外の養豚関連の雑誌は電子化され、メールマガジンの形で、世界を飛び回っています。しかし、なかなか、英語で書かれた情報を開いてみることは、しんどいものです。

 これら海外情報の中から養豚産業にとり重要と思われるものを、取り出してダイッジェスト版(要約)の形で、解説を加えて述べてみたいと思います。今回は、海外の情報の中で、東日本大震災に関する記事を選んでみました。



<4月8日 ピッグインターナショナル 電子版>

 「日本の震災、津波の影響で、日本の養豚生産は13%減少する。併せて養鶏関係でも、11%減少する」「震災の影響は、日本の食糧輸入割合を拡大する要因となる」

 このリポートは、外資系の銀行の調査部が出したと書かれています。ただ、4月以降の豚の出荷数を見る限り、13%の減少という数字は、どこにも現れていません。
 これは、津波、原発が、東北の被災地全体を襲ったとの類推で、岩手、宮城、福島等の飼養頭数が国内生産の13%程度なので、それから出た数字と思われます。
世界的には、豚肉価格は上昇気味で、国内豚価の下支えともなっているようですが、頭数減による価格上昇というシナリオは書かれていません。
 情報化社会といっても、まだまだ現場のリアルな情報は日本からは発信されていないようです。