元気な韓国養豚!

危機を飛躍のバネに豚コレラマーカーワクチンを自主開発+生産性もアップ!

 

お隣、韓国の養豚産業は、国内での北朝鮮国境地帯でのアフリカ豚コレラ(ASF)の発生、豚コレラ=豚熱の抑制、さらに増加する輸入豚肉に対する対抗という3つの産業をゆるがす危機をかかえています。

 しかし、このような中で、ASFについては、摘発と防除でこの2年間は発生農場での対策でおしとどめています。また豚肉生産は、毎年増加しつつあります。豚コレラ=豚熱に関しては、国内でマーカーワクチンを自主開発、2020年から本格使用を開始しています。

 このマーカーワクチンの効果は抜群で、すでに種豚の20%に使われています。さらにしっかりした最新のデジタル技術を導入した養豚試験場では、ワクチンの生産に及ぼす効果を検証、出荷が7~10日早まることを確認、子豚、肉豚への接種もはじまっています。

また、症例が似るASFとの識別の必要もあり、マーカーワクチンを経口ワクチンとして使い国境地帯に散布、これまでのところ、野性イノシシに豚コレラの野外株による感染が無いことを確認しています。 

 マーカーワクチンは、抗体の上がりがこれまでの生物学的に作られたワクチンより良く、ワクチンショックも少ないことが知られています。また豚熱清浄化について、ワクチンを打ちながらも野外感染との識別が出来ることからOIE(国際獣医機関)でも、清浄化を早める手段としてみとめています。 

 日本の行政当局は、韓国のマーカーワクチンの検討はせず、自主開発で15年ほどかけると話しているとも聞きます。これは、今後10年以上にわたり日本の養豚産業が、姿のはっきりしない「豚熱」にこれまで以上の対策が打てず、放置することを意味すると考えます。 

 この15年で養豚の世界地図は大きく変わってきました。中国では、ASFに対しPCRとパーシャルデュポプレーション(部分選択淘汰)でその被害を止め、かつ、高層豚舎の建設とインテクレーション化により、飼養頭数を回復させています。韓国は、官民上げての衛生対策とIT化により養豚生産を強化しています。ちなみに、最新の報告では韓国の飼養母豚は、111万頭で、日本は82万となっています。 

 問題は、解決の仕方とそれに携わる人々の熱意です。縦割り、前例踏襲、情報公開の遅れ、すべて今回のコロナ禍で指摘され続けてきました。それが、日本の養豚政策の中でも繰り返されているのではないでしょうか?今回紹介するのは、最新の韓国養豚雑誌に掲載された、韓国の豚熱マーカーワクチンをメインにした論文です

 これまで、韓国というと養豚後進国のイメージでしたが、貪欲に海外の技術を吸収自由な発想でその生産性の向上は眼をみはるものがあります。その努力を「他山の石」として、謙虚に耳を傾けるべきではないでしょうか? 

日本語訳:CHO HYON OKU

補足・監訳:山下 哲生 

 


  

情報通信技術 (ICT)を利用した豚コレラ(CSF) LOMワクチンと生マーカーワクチンとの生産性比較

Choi,SeEun (チョイセウン)獣医師 検疫所研究員

農林畜産検疫本部 ウィルス疾病課所属

 

.序論

 最近養豚場では情報通信技術 (ICT, Information & Communication Technology)を活用し、豚の飼育環境及び生産性を向上させワクチンに対する評価も可能になってきている。

 情報通信技術 (ICT 各種情報を集めるセンサー とそれらの情報を集積 分析を行う)が設備されたスマートファームでワクチン接種後飼料の摂取効率、増体率(体重の増加率)及び成長プロセスでの屠畜出荷日齢計測等が可能になりワクチンの種別による農場生産性と経済的な利益判断が可能になった。

 このような技術を土台に最近 農林畜産検疫本部ウイルス疾病課豚コレラ斑(以下、検疫本部)では、ワクチンの開発段階からの豚のウィルス疾病予防だけではなく生産性向上に役に立てるべくワクチン開発に傾注してる。

 検疫本部で ICT技術を利用した生産性分析事業を検討実施後 国際学術誌のワクチン誌 (Vaccines )に掲載した結果である豚コレラ LOM ワクチンと 生マーカーワクチンとの生産性比較資料を本誌を通じて紹介するごとによって今後、養豚農家での豚コレラ選定の時多少ながらも、役に立てばとの希望である。

.本論

1.養豚場のICT技術

 情報通信技術 (ICT)とは情報を基に、分析利用を行う技術を意味する。畜産で利用するICT融合・複合技術は遠隔及び自動で家畜の生育環境の適切な維持、管理へ主に使用されている。現在養豚場のICT技術は環境管理、生産管理(自動給餌施設、選別機、飲水管理機等)及び経営管理分野で生産性向上と餌料費節減を目標で活用されてる。

 特に生産管理に利用すると飼育段階別豚の飲水量、餌料摂取量及び体重等の記録が可能である。

これは餌料交替、薬物投薬及びワクチン接種等に従う豚の餌料摂取量、体重変化等の測定が可能であり、さらに、このようなデータは屠畜出荷日齢及び母豚の産子数等に与える影響分析での活用が可能である。

 

 

2. 豚コレラ(CSF) LOMワクチン

 国内 豚コレラワクチンは日本Sato 博士によって分離され国内に投入された豚コレラウィルス( CSFV, Classical swine fever virus ) LOM株を弱毒化した生ワクチンで若干の発病性問題を内包してるが、優秀な免疫発原性でこの40年間使用されてきている。2009年頃から養豚農家の要求で豚丹毒ワクチンと同時に接種できる豚コレラ・豚丹毒混合ワクチンとして使用されてる。

 現在、豚コレラ・ 豚丹毒混合ワクチンは母豚交配前1回・子豚5570日齢間1回接種し、種豚場では子豚40日齢、60日齢の2回接種を行ってる。

 豚コレラLOMワクチンは韓国での清浄化の失敗後2003年全国的なワクチン一斉接種時から妊娠母豚での流産・死産の問題が散発的に報告されてきた。又、2004年と2014年の2回にわたる大規模なLOMワクチンのトラブルを通じてLOMワクチンの病原性問題が表面上に現れた。

 勿論、 LOMワクチンは病原性の強い野外豚コレラウィルスの防御に関して効能・効果が優れる。しかし、豚コレラの抗体の無い妊娠母豚への流産・死産を誘発する恐れが有り、抗体の無い未成熟な子豚へ接種時免疫低下をおこして他疾病への感染悪化を招来する可能性が有る。

 ただし、豚コレラLOMワクチンを接種して抗体が形成できた豚に対しては後LOMワクチンが接種されても上記の影響が反映しない為 内陸地域 (済州島除外)では数十年間使用して来た。そしてLOMワクチンの使用を問題視する認識が出来なかったはずである。しかし内地の LOMワクチン接種を行ってる

 養豚農家では相対的にLOMワクチンで生産性の損害を受けてるのではないか?との質問と共に養豚場のICT技術を利用して豚コレラ LOMワクチンと最近開発された(遺伝子組み換え技術で生まれた)生マーカーワクチンを比較した生産性分析が求められてきている。

 

3. 豚コレラ生マーカー( Flc-LOM-BErns )ワクチン

 検疫本部では2010年から世界動物保健機構 ( OIE )で求められる豚コレラ清浄化の為のワクチンの条件を充足する為E2マーカーワクチンを研究しており、ついで豚コレラ生マーカーワクチンまで開発した。

 生マーカーワクチンは2016年から動物薬品会社で技術特許取得及び品目許可を取り、2020年からは、忠淸南道を主として 全羅南道、 全羅北道、 南道 北道、 忠淸北道、 京畿道で販売・使用されてる。

 E2マーカーワクチンは二つの限界が有ると知られているので、それは妊娠母豚の垂直感染の防御が完璧ではないとの事と2回の接種が必要だとの事である。これは緊急ワクチン( Emergency Vaccine : 1回の接種で2週間以内に防御抗体を形成する事)として使用できないし、現在農家では豚コレラと豚丹毒を混合して1回接種する豚コレラ・豚丹毒 混合ワクチンを使用中で E2マーカーワクチンは2回の接種が必要であり、豚丹毒については、別で接種しないと行けないとの不便な所がある。

 豚コレラ生マーカーワクチンの一番の長所はLOMワクチンの副作用 ( 妊娠母豚の流産・死産、子豚問題 )を解決し、緊急ワクチンとしての使用を可能にし、妊娠母豚の垂直感染防御だけではなく豚丹毒との混合ワクチンとして発売され豚コレラ・ 豚丹毒 混合ワクチンになれてる養豚場での使用が手軽に行える点である。又、別の長所としては野外の豚コレラ感染と生マーカーワクチンによる抗原と抗体の鑑別が可能の事である。

 生マーカーワクチンの長所の中で他の国と大別される優秀な所は野生イノシシ用の豚コレラ経口予防ワクチンとして活用できるてんある。 野生イノシシ用の豚コレラ経口予防ワクチンは一種類でドイツで開発され、これを自国内で使用、周辺国(ポーランド、リトアニア、ルマニア、ベラルーシア等)及び日本へ輸出している。

 しかし、ドイツ製経口予防ワクチンは豚コレラの抗体が野外ウィルスによって感染された抗体なのかワクチンによる抗体なのかの鑑別が出来ないし、抗原(豚コレラ野外株)検出力が落ちるとの効能・効果の評価を受けている。

  一方、国内で開発した生マーカーワクチンを利用した経口予防ワクチンは抗体鑑別が可能である。国内で開発した生マーカーワクチンは2020年末から仁川、京畿、江原地域へ撒布されている。これにより201911件、20207件で有った豚コレラウィルス野外株の検出が今年は検出されてないし、ワクチンによる抗体と野外ウィルス感染による抗体が鑑別されており経口予防ワクチンによる効果が確実に表れてると判断されてる。このようにあらゆる面で優れた生マーカーワクチンが養豚場でLOMワクチンを代替した場合時、生産性にはどのような影響を及ぼすのかを以下の様に調査して見た。

 

4. 養豚場 ICT技術を利用した豚コレラLOMワクチンと生マーカーワクチン間の生産性分析

(1)飼料摂取量、増体率、屠畜出荷日齢比較

  現在品目許可後市中で販売されてる2種の豚コレラ (LOM)・豚丹毒 混合ワクチンと豚コレラ (生マーカー株)・豚丹毒 混合ワクチンを使用した。それぞれの豚コレラ(LOM)・豚丹毒 混合ワクチンを LOMワクチンとして、豚コレラ(生マーカー株) 豚丹毒 混合ワクチンを生マーカーワクチンと表記した。68日齢育成豚へ LOMワクチンと 生マーカーワクチンを各グループ10頭へ付表上の容量及び接種方法に従って接種した。接種後若120日間飼料摂取量・飲水量及び体重を測定した結果接種後4日~7日の間 LOMワクチンを接種した豚群で飼料摂取量が減少するのが確認出来たが、 生マーカーワクチンの接種豚群では飼料摂取量の変化が無かった。

 LOMワクチン接種群は、接種後平均1頭当500gから300gで飼料摂取量が減少してる。接種後14日間の観察結果 LOMワクチン接種群から頭当総10,500g、生マーカーワクチン接種群では総11,280gの摂取量が確認出来た。二つのワクチン接種群による飼料摂取量の差は体重増加と直結される結果を見せてくれた。ワクチン接種後接種直後の飼料摂取量の減少が発生したLOMワクチン接種群に比べて飼料摂取量の減少が発生しなかった生マーカーワクチン接種群では高い体重の増加率を表した。

 実験室内で平均屠畜出荷可能体重(110Kg)へ到達日齢を比較した結果LOMワクチン接種群は、170日齢、生マーカーワクチンは162日齢で生マーカーワクチン接種の接種群の方が8日早めに屠畜日齢に到達した。( 2

 上の実験結果をもとに ICT装備が設置された養豚場内でLOMワクチン及び 生マーカーワクチンの生産性を比較検証した結果 LOMワクチン接種群は接種後4日目から8日目まで飼料摂取量が減少し、屠畜出荷体重日齢が192日であるが生マーカーワクチン接種群では飼料摂取減少無しで、屠畜出荷体重が183日齢で到達にいたった。( 3

 

 

 

(2)免疫原性比較

 豚コレラ LOMワクチン及び生マーカーワクチンの免疫原性はそれぞれの接種後14日後、豚コレラワクチン株の中和抗体が生産され、100日以後全ての群から高く維持され屠畜出荷時まで二つのワクチンの間の免疫原性には差異が無かった。LOMワクチンと生マーカーワクチン接種後鑑別診断結果、接種後時間の経過によってLOMワクチン接種群からCSFV Erns抗体陽性とBVDV Erns抗体陰性の確認出来て、生マーカーワクチン接種群からは反対で CSFV Erns抗体陰性とBVDV Erns抗体陽性の調査結果が確認された。

 

このような結果は生マーカーワクチンは LOMワクチンを基本構造として病原性に関連されて、遺伝子 Erns部位を牛ウィルス性下痢病ウィルス ( BVDVBovine viral diarrhea virus )Erns遺伝子に交替して生マーカーワクチンを作ったからである。

 従って、生マーカーワクチンの接種群ではCSFV Erns遺伝子が無い為このタンパク質の抗体は陰性、

交替された BVDV Ernsタンパク質に対する抗体は陽性に表れるようになった。( 4 )

 

(3)安全性比較

  豚コレラ LOM ワクチン及び生マーカーワクチンの安全性を分析する為接種後体温、白血球数及びサイトカイン数値変化を測定した。豚コレラワクチン接種ストレス中の一つである一時的な高熱反応は接種1日~2日後LOMワクチン接種群から直腸体温が38.5℃から40.2℃に約1.7℃上昇して5日間持続したが生マーカーワクチン接種群は正常範疇内で体温が維持された。

 また他の接種ストレス指標である一時的な白血球減少症は接種2日後からLOMワクチン接種群から白血球数値が8000/10㎕以下に減少する白血球減少症が発生して2日間持続後接種後5日目で回復した。一方で生マーカーワクチン接種群の白血球は正常範囲 ( 15,000~21,200/10 )内で測定された。

 豚コレラ野外ウィルス感染時出血等病院性誘発と関連したサイトカイン3( TNFa, IL-6, IL-10 )の発現された。しかしワクチン接種後円滑な体内細胞性免疫関連サイトカイン INF-yは生マーカーワクチン接種群から相対的に多く発現された。これは生マーカーワクチンがワクチン抗体形成の為体内免疫反応がもっと活発でもっと安全なワクチンであるとの事を意味し得る。

 

(4)飼料摂取量及び経済性比較

  養豚場 ICT技術を活用して最近開発された豚コレラ、生マーカーワクチンが養豚農家の生産性へどの様な影響を及ぼすのかを既存使用された LOMワクチンと比較実験した結果として注目すべき成果を見せた。LOMワクチン接種群は接種後4日~5日から飼料摂取が規則的に減少し一時的な熱反応と一時的な白血球減少症も見えたが、生マーカーワクチン接種群は飼料摂取量及び一時的な副作用等に全然影響を受けないとの事が確認出来た。

 過去3週∼4週間の間豚コレラワクチン間の飼料摂取量比較結果をもとに屠畜出荷日時を評価した結果とは異なり本実験の研究では実質的に屠畜出荷時まで同一個体の体温、体重、飼料摂取量等持続的な追跡を通じて調査を行った。

 本研究で最も驚くべき事実はワクチン接種後発生した飼料摂取の差が体重増加と直結され、LOMワクチン接種群と比べて生マーカーワクチン接種群の屠畜出荷日齢が平均7日~10日早まるとの例が調査報告された。これは安全性の面で生マーカーワクチンが LOMワクチンと比べて卓越であることが予測されている。養豚農家で既存使用中の LOMワクチンの代わりに生マーカーワクチンでの交替時単純に飼料費用 ( 頭当7,500ウォン)の節減だけではなく、豚舎混雑による密飼の解消とそれによる疾病への感染リスクの減少等で頭当19,300ウォンの追加的な機会収益を創出して農場収益が増加できる。これを全体的に合算すると頭当26,300ウォン+α程度の農家利益創出が可能と予測されてる。

 

.結論

  最近一部養豚獣医師達が生マーカーワクチンを母豚へ適用した結果LOMワクチン接種時現れる一時的な食不(餌摂取拒否)現象が生マーカーワクチン接種時は現れなかった。

 現在豚コレラ ( LOM )・豚丹毒混合ワクチンは全量国家負担( 国費50%と地方費50 )で養豚農家へ補給されている。1頭当豚コレラ ( LOM )・豚丹毒混合ワクチン価額は256ウォンで30年前策定された価額である。「2021年家畜防疫実施要領」に“予防薬品を変更して単価上昇時追加される金額は地方費を使用”との文が追加され豚コレラ( 生マーカー株 )・豚丹毒混合ワクチンは地方自治体で地方費( 頭当244ウォン )を投資して500ウォンで購買している。 事実、多疾病ワクチン( PED, PERS, PCV2 ワクチン)等に比べると相当低廉な方であり、農家へLOMワクチンを生マーカーワクチンに交替時予想される頭当経済的な利益を考えると種豚場及び養豚農家達では積極的なワクチン交替を考慮しない理由が無いとの事である。また、()大韓韓豚協会では国費及び地方費支援を持続して要求してる為今後良い成果が期待されてる。

 

■引用文献

1 . Choe S, Kim KS, Shin JH, Song S, Park KN, Cha RM, Choi SH, Jung BI, Lee KW, Hyun BH, Park BK, AN DJ, Comparative analysis of the productivity and immunogenicity of an attenuated Classic swine fever vaccine ( LOM ) and attenuated live marker classical swine fever vaccine ( Flc-LOM-BErns ), MDPI Vaccines.