道は創られる!
            ピッグスペシャリスト 山下哲生



 中国の偉大な文学者、魯迅(ろじん)は希望について述べています。「希望とはあるようにも無いようにもおもえる。ただ、そこを歩む人が続き多くなれば、やがて道になる」と。 

 養豚産業にかかわって45年、ブリティッシュバークシャーの育種・普及・増殖を始めて15年。人生の皮肉か、最も力を入れがんばった、「豚コレラ撲滅運動」。その豚コレラが長野県でも発生し、英国黒豚の原種豚農場「信州BBファーム」は、2020年4月15日に最終出荷し、4月25日に車輌・備品を処分し業務を停止しました。

"British Berkshire (BB)in JAPAN" は不滅です!


 英国黒豚の系統維持と増殖は、若い農業高校生達に託すことにしました。イギリスでも、種・系統の維持には、農業高校、動物園、観光農場などが、その保存・維持に力を入れています。これらの施設は、どちらかというと教育、啓蒙、種の保存維持に力を入れてきています。つまり、経済社会環境に対応しなければ成長を望めない一般のコマーシャル養豚場と異なり、長い視点での育種が可能なのです。

 日本でも沖縄のアグー豚は、戦後その数が30頭台にまでなりました。この減ったアグー豚を沖縄では、1985年から沖縄北部農業高校で18頭から維持増殖、血統を戻し、さらに民間に分譲され、今では沖縄を代表する地域ブランドとして復権してきました。

 私達は増殖維持に協力、積極的にコミットし、寄贈、あるいは予算に合わせた低価格の条件で育種増殖に意欲を出してくれた愛知、東京、神奈川の農業高校に、2~3月にかけてBB種豚、育成豚の14頭の輸送を実行しました。

 系統としては、愛知の渥美農業高校には♂系のピーターラッド・オーランド、♀系のロイヤルサファイア・エクサルーサ・スザンナ、東京の瑞穂農芸高校には♂系のオーランド・アンバサダー、♀系のルイーザ・エクサルーサ、神奈川の相原高校には♂系のオーランド、♀系のストンボー・エクサルーサを運びました。皆、100%のBB豚で、瑞穂農芸高校では子豚も生まれています。

 基本となるBB原種雄豚と系統だった育種は、富士農場サービスにも委託しました。輸入豚では、ナマアベル・アンバサダーのAI用の♂を預託、精液供給が出来るようにしています。さらに、育成雌豚の系統であるエクサルーサ・スザンナ・ルイーザ・ストンボーも販売。今後、富士農場サービスからも、ワクチン接種地域限定というくくりはありますが、BB 100%の種豚供給が行えるかもしれません。

 その他、信州BBファームで研修を行った研修生宛てに伊豆大島にBB雄豚2頭、育成雌豚7頭を昨年9月に送りました。分娩も始まり100%のBBが生まれています。
 伊豆大島ではイノシシがいないこともあり、豚コレラのワクチンは接種されていませんので、BB豚の全国への出荷が可能です。

 九州においては、「南九州BBファーム『藤崎農場』」(鹿児島県南九州市頴娃町)からも 全国に種豚供給が可能です。さらに、徳之島にもBBの♂系4系統、♀系5系統を送り、維持増殖を2年前より行っています。

 BB豚は、純粋繁殖を基本にしています。北海道、東北にも種豚を送り、併せて種豚登記を進めてきました。これら生産農場のネットワーク化も進めていきたいと思います。
 弊社・㈲黒豚振興エージェンシーはこれからも、BB豚の情報ネットワークの中心として、BB普及の下支えをさせていただきたいと考えています。

【今後の連絡は東京事務所にお願いいたします】
 TEL 03-3466-9282
 FAX 03-3468-6372
 携帯電話 090-3138-0947
 e-mail:yohtonjk@mxh.mesh.ne.jp
 ホームページ:www.pigjapan.com/



【信州BBファーム業務停止までの関連写真】


2020年3月、伊豆大島での放牧用豚場で育つ育成豚。♀7頭、♂2頭
後方の小屋は馬小屋で、そこを寝場所にしています。
火山灰地で水はけは良好。しかし電気はきていません。


伊豆大島でのBB放牧
放牧開始から半年。体調も良好。
下草はきれいに食べられ、地面の青草も食べられ、笹と大きな木が残っている程度。


農場の脇を流れる阿弥陀川下流のサクラが満開になりました。農場から車で3分です。
今年は花見も行われず、春らしい雰囲気は見られませんでした。


2016年来日の「ナマアベル13」
しつかりした、すばらしい♂です。
いつも元気でAI精液の採取も出来ました。
4月11日にアンバサダーと一緒に富士農場サービスに預託しました。精液供給可能です。


2016年来日の「アンバサダー24」
精液では一番人気の♂。
バランスがとれ安定した成績とコンスタントに良質の精液を産出。
ナマアベルとともに、4月11日に富士農場サービスに引き取られていきました。


AIセンターも解体され、新天地で活用すべく運ばれていきました。
組み立て式ですが、組み立てにはおよそ一週間かかりましたが、解体・撤去には、2時間とかかりませんでした。


自社便による育成種豚の輸送
候補豚には、耳標がつけられ登記証明書が発行されました。
このような先が見えない時代、でも若い生産者を中心に、BBをやりたいという新規の購買希望者が多く現れました。


4月15日の出荷豚
BBの肉豚は、発育も抜群です。
215日齢で、生体120 kgが平均というところです。
脂はやや厚くなりますが、軽い脂身で、角煮やしゃぶしゃぶでも、脂身から食される人気ぶりです。


最後の出荷
トラックは石灰、防護柵、消毒装置で守られてきた農場を出ていきました。
信州BBファームでの養豚事業は一区切りつきました。